ゲームに熱中して、仕事や学校に行かなくなるなど日常生活に支障を来してしまうゲーム障害。有効な薬はないため、カウンセリングや認知行動療法などで治療する。若い人を中心に増えているゲーム障害。ゲームに熱中して、仕事や学校に行かなくなるなど日常生活に支障を来してしまう。本能や感情をつかさどる大脳辺縁系が優勢になるため、依存状態から抜け出すのが難しい。有効な薬はないため、カウンセリングや認知行動療法などで治療する。ゲーム障害について理解し、ゲームをやめる必要があることに気付くことが重要。ゲームの時間・場所を決めておくなど、ルール作りが予防につながる。
国立病院機構久里浜医療センター院長…樋口進,
黒沢保裕,岩田まこ都
認知療法・認知行動療法は、認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種です。認知は、ものの受け取り方や考え方という意味です。ストレスを感じると私たちは悲観的に考えがちになって、問題を解決できないこころの状態に追い込んでいきますが、認知療法では、そうした考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていきます。
認知行動療法(にんちこうどうりょうほう、英:Cognitive behavioral therapy:CBT)は、従来の行動に焦点をあてた行動療法から、アルバート・エリスの論理療法や、アーロン・ベックの認知療法の登場によって、思考など認知に焦点をあてることで発展してきた心理療法の技法の総称で、「認知行動療法」の用語は、アメリカ以外の国でしばしばアーロン・ベックの認知療法(Cognitive therapy)を指している。本項では本来の意味である総称としての認知行動療法の説明に力点を置く。哲学的には、古代ローマのストア派や仏教の影響を受けてはいるが、1950年〜60年代の論理療法や認知療法に起源をもつ。共に、不適切な反応の原因である、思考の論理上の誤りに修正を加えることを目的としており、認知、感情、行動は密接に関係しているとされ、従来の精神分析における無意識とは異なり、観察可能な意識的な思考に焦点があり、ゆえに測定可能であり、多くの調査研究が実施されてきている。
認知行動療法 | |
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治療法 | |
認知トライアングル
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MeSH | D015928 |
認知行動療法は、うつ病、パニック障害、強迫性障害、不眠症、薬物依存症、摂食障害、統合失調症などにおいて、科学的根拠に基づいて有効性が報告されている。また自殺企図を半分程度に減少させる。専門家によって実施されるほかに、こうした技法はマニュアル化できるため、セルフヘルプ・マニュアルのように自身で行うこともできる。コンピューターCBTと呼ばれるパソコンプログラムとの対話も存在する。コンピューターCBTは、施術者の不足する地方で有用で、行動療法の側面の強いのは強迫性障害に対する曝露反応妨害法や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する持続エクスポージャー療法である。後者のものは「トラウマに焦点化した認知行動療法」に含まれる。
第三世代の認知行動療法には、マインドフルネス認知療法、アクセプタンス&コミットメント・セラピーなどがあり、うつ病や不安だけでなく、疼痛にも効果が見られている。境界性パーソナリティ障害に特化された技法は弁証法的行動療法であり、これは瞑想の技法と認知行動療法を組み合わせたような構成である。
認知や行動は、精神分析とは異なり、現在利用可能な研究技術によって観察できるため、研究することができる。伴って、膨大な数の調査研究が行われてきた。
有効性
薬物療法と効果は同等であり、効果の持続時間はそれ以上であることが承認されている。多くの臨床研究によりうつ病と不安障害に対して効果が高いというエビデンスがある。精神病症状に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for psychosis:CBTp)は、34のランダム化比較試験と、いくつかのメタアナリシスによって、症状の重症度の有意な減少が見いだされており、また陰性症状や否定的な気分や社交不安の大幅に改善が見いだされている。統合失調症では、薬学的治療によっても25–55%は症状から完全には回復せず、4分の3は18カ月以内に薬を中断しているため、認知行動療法による介入が推奨される。
うつ病と不安に対するコンピューターCBT(CCBT)は、施術者が不足している地方、農村部や遠隔地において有用であり、都市部の人々に対するのと同等に有効であることを確認した。
コクラン共同計画によるシステマティックレレビューとメタアナリシスは、認知行動療法が自殺企図を半分程度に減少させることを見出した。
批判と疑問点
うつ病に対する抗うつ薬の臨床試験の場合、偽薬(有効成分が入っていない)の投与群でも症状がある程度改善するため、薬剤を服用しているという希望や期待によって否定的な思考が改善していることが示唆されていることから、認知行動療法の効果もプラセボ効果ではないかという批判がある。プラセボ効果に詳しいアービング・カーシュによれば、追跡調査で効果に違いがあり抗うつ薬では治療をやめると再発しやすいが、認知行動療法では長期的にみると再発率が抗うつ薬よりも低いという。しかし、認知行動療法の長期的効果研究については、患者も治療者も治療内容を認識している以上(これはどんな精神療法にも当てはまると言える)、治療急性期と同様に二重盲検が不可能であり認知行動療法の長期的効果研究法に大きな不備があると指摘されている。
2013年にダグ・ベルガーは、認知行動療法の前提においては否定的な思考という症状がうつ病の原因であるとされているが、医学や精神医学の中では症状が病気の原因になっているの唯一の例だと指摘し、加えて(認知行動療法の研究の方法として)治療法を患者に対して二重盲検法によってランダムに割り振れないのではないかと疑問を呈している。たとえ二重盲検法を用いても、患者も治療者も否定的な思考を修正することに積極的に取り組むことになり、希望による期待によってバイアス(偏り)が生じる。また、研究の評価者は治療内容を認識していないが患者と治療者の両者が認識している単盲検(シングルブラインド)による効果の研究方法は、結果を歪ませてしまう。2010年のメタアナリシスによると、二重盲検法による研究よりも単盲検のほうが効果が大きく出ている。しかし、単盲検(シングルブラインド)の正式な定義は、患者のみが治療内容を認識しているしくみである。
その上でベルガーは、うつ病における試験では50%の改善にて反応したとして評価するので、心理的な苦痛を和らげてはいるもののうつの根本的な部分は実際に変わっていないと批判している。また「私はだめな人間」のような否定的な思考は抑うつ気分から生じているかもしれないが、治療者によって与えられる希望や支援によって緩和されるがそれでもなお苦痛は残っている(この改善率などの評価方法は、抗うつ薬の試験でも同様である)。心理療法の臨床試験の募集の際には既にバイアス(偏り)が生じており、心理療法に反応しないような重症のうつ病の者は臨床試験に採用されにくく、日常の臨床に適していないとも指摘している。
ゆえに、ベルガーは二重盲検されているとはみなされないとし、根拠に基づく(EBM)とは言えず、これまでのデータは「統制されていない研究結果」にすぎない、としている。さらにEBMでは、ランダム化比較試験(ランダムに割り付けられた二重盲検による試験)は、ランダム化比較試験が結合されたメタアナリシスについで証拠の強さが強くまた、医薬品の単盲検試験では被験者に割付群を知らせないが、心理療法のランダム化比較試験 (RCT) における単盲検では効果の評価者に割付群を知らせないという違いがある。心理療法のRCTの問題を克服する手法も開発されており、評価者がブラインド化された研究では効果量が50〜100%高く出ることもない。なお、抗うつ薬の二重盲検試験にも、副作用の有無によって医師と被験者に抗うつ薬と偽薬のどちらを投与したか見破られるという問題がある。
しかしながら、抗うつ薬では別の疑問が存在し、得られたデータを解析し、偽薬と比べて臨床的に意味のある差がないことが判明している。
重度の症状が有る場合は、苦痛を伴う事が少なからず有る事で苦痛に耐えきれず中途で断念する人が少なからずいる(医薬品の試験でも同様であり、例えば、抗精神病薬の試験では「18カ月で」74%が、効果がないか副作用のため試験から脱落している)。抗精神病薬は統合失調症に用いられる。認知行動療法の主な対象であるうつ病において使われている抗うつ剤の脱落率は、「6週間(1か月半)で」、SNRI系抗うつ薬で26.1%, SSRI系で28.4%である。