女性から男性へ性別適合手術を受け戸籍上も男性へ
ストーリーズ「性別“ゼロ”~本当の自分を探して~」2019年12月9日(月)NHK総合1・東京 にて22:50~23:20の放送
手術を受けて女性から男性に性別を変えた小林空雅さん。それでも違和感がなくならず、男女の枠を超えた「新たな自分」に目覚めていく。小林さんの変遷を9年にわたり取材。
小林空雅さんは「女の子」として生まれたものの、幼いころから違和感を覚え、果敢に自らを変えていった。中学生の時にはセーラー服を着ることを拒否し、20歳になると性別適合手術を受け、戸籍上も男性となった。しかし、それでも性別への違和感はなくならなかった。女でも男でもないとしたら「本当の自分」は何だろう?小林さんの模索が続く。15歳のときから9年にわたってその変遷を追い、多様化する性別のありようを伝える。
性別適合手術
性別適合手術(せいべつてきごうしゅじゅつ)とは、性別の不一致、性同一性障害を抱える者に対し、当事者の性同一性に合わせて外科的手法により形態を変更する手術療法のうちの、内外性器に関する手術を指す。“Sex Reassignment Surgery” (SRS) の訳語。
原語を直訳した性別再割り当て手術(性別再割当手術)、性別再指定手術、性別再判定手術、性転換手術などの名称もある。日本のGID学会、日本精神神経学会では「性別適合手術」を正式な名称として用いている。
《女性から男性へ》
女性から男性への手術 (FTM SRS) では、いくつかの段階に分けておこなわれる。
- (1) 子宮卵巣摘出術
- (2) 膣粘膜切除・膣閉鎖術
- (3) 尿道延長術
- (4) 陰茎形成術
- (5) 陰嚢形成
《リスク》
手術の結果、重篤な術後の体調不良が訪れることがあり、中には、とても疲れやすくなったり、術前に分泌されていたホルモンがなくなる結果、更年期障害が発生したり、それまでの仕事を続けられなくなる者もいる。中には後悔のあまり自殺する者も存在し、タイでこうした手術のアテンドを助ける渡邉アツミは、「ネット上にはSRS体験者の喜びの声が溢れていますが、その後の健康、人生、人間関係がどう変わるかが抜け落ちています。」と言い、本来なら手術が必要ないかもしれない人の背中を押すアテンドが行われているとして、日本での性適合手術の一面的な報道に警鐘を鳴らしている。
また、中塚幹也岡山大学大学院教授は、「術後はホルモン投与が不可欠。投与がないと、抑うつ症状や体調不良、血圧上昇など心身に変調が生じる」と、術後における不便さを指摘している。朝日新聞の報道によると、性同一性障害の治療をしていたクリニック(湊川クリニック)において、乳房切除手術で21歳の女性が死亡しており、ある性同一性障害団体の調査によると、その他に、この手術によって、腸閉塞(へいそく)や排尿障害などの重篤な後遺症を患った例があると報告されている。
神奈川新聞によると、焦って手術をして後悔するケースもあり、若い人はリスクを知る必要性がある、とされ、術後に性器の外見だけは変わったものの、マイナンバー提示で職場に発覚するのが怖くなり、職場を転々、その後は就職できずにいる者もいるとする。
愛知県のある医師は、「生殖機能が永遠に絶たれるということをよく考えて」とし、「手術で幸せになるとはかぎらない。外見や人間関係で不幸になる人もいる」としている。
ベルギーにおいては、44歳の女性が性転換手術に失敗し、耐えがたい精神的苦痛を訴えて、2013年9月30日に自ら安楽死を望み、死亡。手術の結果、腎機能が著しく低下する懸念もある。