【相対的貧困】2/5ハーネットTV

相対的貧困 日本は?

ハートネットTV 平成がのこした宿題5▽子どもの貧困~連鎖どう食い止めるか 2019年2月5日(火)
20:00~20:30 NHKEテレ1にて放送されます。

今、日本で「相対的貧困」状態の子どもは7人に1人。経済的な理由で、進学や部活に参加するなど「普通」の機会が得られない。平成の宿題を整理し、未来への提言に繋げる。

平成の終わりを前に30年間で積み残された宿題を整理し、未来への提言に繋げるシリーズ。第5回は「子どもの貧困」について。7人に1人。今、日本で「相対的貧困」の状態にある子どもの割合だ。経済的な理由から、進学や部活に参加するなど社会で「普通」とされる機会を得られない。背景には平成の間に進んだ雇用保障や、社会保障の変化がある。貧困をめぐる政策の変遷を振り返りながら、新たな時代に必要とされる対策を探る。

沖縄大学教授…山野良一,

河野多紀

日本は先進国の中で、「貧困率」の高い国のひとつとしていわれています。なぜ豊かでありそうな日本で貧困率が高いのでしょうか?

貧困といっても衣食住にも困る「絶対的貧困」と、社会全体の中で見ると相対的に貧困層に属する「相対的貧困」があり、日本の”貧困”は当然ながら「相対的貧困」のほう。社会全体もさほど深刻な問題ではない、という意識があるのでしょう。実際に、貧困率というよりも「格差」と考えればわかりやすいのかもしれません。

相対的貧困

相対的貧困(そうたいてきひんこん)の定義は「等価可処分所得(世帯可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯員」であり、この割合を示すものが相対的貧困率である。ただし、預貯金や不動産等の資産は考慮していない。

実収入-非消費支出=可処分所得
可処分所得÷√世帯人員=等価処分所得
※等価弾性値=0.5(平方根)。現物給付、預貯金、資産は考慮しない。

絶対的貧困率と違い数学的な指標なので主観が入りにくいとされるが、国によって「貧困」のレベルが大きく異ってしまうという可能性を持つ。この為、先進国に住む人間が相対的貧困率の意味で「貧困」であっても、途上国に住む人間よりも高い生活水準をしているという場合と先進国においては物価も途上国より高く購買力平価を用いた計算をすると途上国よりも生活水準が低い場合が存在する。 国民生活基礎調査における相対的貧困率は、一定基準(貧困線)を下回る等価可処分所得しか得ていない者の割合をいう。最新のデータであるOECDの2017年の統計によれば、相対的貧困率は下記の表となる。総合で高い国は高い順に、南アフリカ共和国、コスタリカ、アメリカであり、逆に低い国は低い順に、アイスランド、デンマーク、チェコである。18歳未満で高い国は高い順に、南アフリカ共和国、コスタリカ、トルコであり、逆に低い国は低い順に、デンマーク、フィンランド、アイスランドである。18~65歳で高い国は高い順に、南アフリカ共和国、コスタリカ、アメリカであり、逆に低い国は低い順に、チェコ、アイスランド、スイスである。66歳以上で高い国は高い順に、韓国、エストニア、ラトビアであり、逆に低い国は低い順に、アイスランド、デンマーク、オランダである。

OECDデータによる相対的貧困率
総合(%) 18歳未満(%) 18~65歳(%) 66歳以上(%) 統計年
オーストラリアの旗 オーストラリア 12.1 12.5 9.4 23.2 2016
オーストリアの旗 オーストリア 9.8 11.5 9.6 8.7 2016
ベルギーの旗 ベルギー 9.7 12.3 9.3 8.2 2016
カナダの旗 カナダ 12.4 14.2 12.4 10.5 2016
チェコの旗 チェコ 5.6 8.5 5.0 4.5 2016
デンマークの旗 デンマーク 5.5 2.9 7.0 3.1 2015
フィンランドの旗 フィンランド 5.8 3.3 6.8 5.0 2016
フランスの旗 フランス 8.3 11.5 8.5 3.4 2016
ドイツの旗 ドイツ 10.1 11.2 10.0 9.6 2015
ギリシャの旗 ギリシャ 14.4 17.6 15.4 7.8 2016
ハンガリーの旗 ハンガリー 10.1 11.8 10.0 8.6 2014
アイスランドの旗 アイスランド 5.4 5.8 5.8 2.8 2015
アイルランドの旗 アイルランド 9.8 10.8 9.9 6.4 2015
イタリアの旗 イタリア 13.7 17.3 13.9 10.3 2016
大韓民国の旗 韓国 13.8 7.1 8.5 45.7 2015
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク 11.1 13.0 11.2 7.7 2016
メキシコの旗 メキシコ 16.7 19.7 13.9 25.6 2014
オランダの旗 オランダ 8.3 10.9 8.8 3.1 2016
ニュージーランドの旗 ニュージーランド 10.9 14.1 9.7 10.6 2014
ノルウェーの旗 ノルウェー 8.2 7.7 9.3 4.4 2016
ポーランドの旗 ポーランド 10.3 9.3 10.7 9.3 2016
ポルトガルの旗 ポルトガル 12.5 15.5 12.6 9.5 2016
スロバキアの旗 スロバキア 8.5 14.0 7.8 4.3 2016
スペインの旗 スペイン 15.5 22.0 15.4 9.4 2016
スウェーデンの旗 スウェーデン 9.1 8.9 8.4 11.0 2016
スイスの旗 スイス 9.1 9.5 6.4 19.5 2015
トルコの旗 トルコ 17.2 25.3 13.5 17.0 2015
イギリスの旗 イギリス 11.1 11.8 10.1 14.2 2016
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 17.8 20.9 15.5 22.9 2016
エストニアの旗 エストニア 15.7 9.6 11.9 35.7 2016
イスラエルの旗 イスラエル 17.7 23.2 14.3 19.4 2016
スロベニアの旗 スロベニア 8.7 7.1 8.2 12.3 2016
日本の旗 日本 15.7 13.9 13.6 19.6 2015
チリの旗 チリ 16.1 21.1 14.2 16.3 2015
ラトビアの旗 ラトビア 16.8 13.2 13.1 32.7 2016
リトアニアの旗 リトアニア 16.9 17.7 14.2 25.1 2016
コスタリカの旗 コスタリカ 20.4 27.3 16.7 25.5 2017
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国 26.6 32.0

 

日本

日本の貧困率について表した最新のデータであるOECD2017年の統計によれば、日本の相対的貧困率(2015年)は総合が15.7%で、同じ年の2015年に調査された34か国の中では、チリ(16.1%)に次いで10番目に相対的貧困が高い。18歳未満の場合は13.9%であり、34か国の中ではスロバキア(14.3%)に次いで、14番目に相対的貧困が高い。また、18~65歳の場合は13.6%であり、34か国の中ではカナダ(14.1%)に次いで、11番目に相対的貧困が高い。66歳以上の場合は19.6%であり、34か国の中ではリトアニア(20.4%)に次いで、9番目に相対的貧困が高い。これは、日本の貧困率が先進国の中でもかなり高い部類に入っていることが示されている。日本より貧困率が高いトルコ、チリ、ラトビア、エストニアはいずれもOECDには加盟しているが、先進国とはっきり言える経済力ではないため、その点を踏まえると、日本は先進国の中でイスラエル、アメリカに次いで3番目に貧困率が高い国という見方もできる。逆に、西欧諸国の大半が10%以下の国であり、2015年の総合で34か国中もっとも低いアイスランドの5.4%とデンマークの5.5%を筆頭に、北欧諸国の貧困率が低い。

国民生活基礎調査厚生労働省)による相対的貧困率編集

日本の相対的貧困率は、以下の表より2015年の時点で15.7%であり、データが存在する1985年以降、3年ごとの調査の中で4番目に高い数値となっている。

国民生活基礎調査による貧困率の推移
 相対的貧困率( % ) 1985年 1988年 1991年 1994年 1997年 2000年 2003年 2006年 2009年 2012年 2015年
全体 12.0 13.2 13.5 13.8 14.6 15.3 14.9 15.7 16.0 16.1 15.7
子どもの貧困率 10.9 12.9 12.8 12.2 13.4 14.4 13.7 14.2 15.7 16.3 13.9
子どもがいる現役世帯 10.3 11.9 11.6 11.3 12.2 13.0 12.5 12.2 14.6 15.1 12.9
子どもがいる現役世帯
[大人が1人]
54.5 51.4 50.1 53.5 63.1 58.2 58.7 54.3 50.8 54.6 50.8
子どもがいる現役世帯
[大人が2人以上]
9.6 11.1 10.7 10.2 10.8 11.5 10.5 10.2 12.7 12.4 10.7
中 央 値 ( 万円 ) 216 227 270 289 297 274 260 254 250 244 244
貧 困 線 ( 万円 ) 108 114 135 144 149 137 130 127 125 122 122

2017年6月27日発表の国民生活基礎調査では、日本の2015年の等価可処分所得の中央値名目値245万円の半分名目値122万円未満の等価処分所得の世帯が、相対的貧困率の対象となる。2015年調査では1985年基準実質値の掲載は無かった。各名目値で単身者では可処分所得が約122万円未満、2人世帯では約173万円未満、3人世帯では約211万円未満、4人世帯では約244万円未満に相当する。

1年の総労働時間を法定労働時間2096時間~2080時間とすれば、可処分所得(「実収入」から「非消費支出」を差し引いた額で,いわゆる手取り収入。賃金などの就労所得、資産運用や貯蓄利子などの財産所得、親族や知人などからの仕送り等。公的年金、生活保護、失業給付金、児童扶養手当てなどその他の現金給付を算入する。)が名目値で122万円の年収に達する時給は約583円~587円以上となり最低賃金水準を下回る、2人世帯では時給約826円~832円以上となり、3人世帯では時給約1,007円~1,015円以上、4人世帯では時給約1,165円~1,174円以上で可処分所得名目値に達する。これに非消費支出(直接税や社会保険料、資産運用の必要経費など世帯の自由にならない支出及び借金利子など。)分を加算した金額が相対的貧困線以上の実収入(一般に言われる税込み収入。世帯員全員の現金収入を合計したもの。)となる。※現物給付(保険、医療、介護サービス等)、資産の多寡については考慮していない。

子どもの貧困率は13.9%、子供がいる現役世帯の貧困率が12.9%。貧困率は子供がいる現役世帯のうち大人が一人50.8%、大人が二人以上の貧困率が10.7%となっている。※世帯とは、住居と生計を共にしている人々の集まりをいい、大人とは18歳以上の者、子供とは17歳以下の者をいい、現役世帯とは世帯主が18歳以上65歳未満の世帯をいう。

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